中国竞彩网_新浪体育nba-直播*官网

图片

HOME > Research > 詳細

Research

ここから本文です。

野外に捨てられたプラスチックが魚を誘惑する!? ?マイクロプラスチックの摂食メカニズムの一端を解明?

 長崎大学水産学部 八木 光晴 准教授、大学院水産?環境科学総合研究科の修士課程2年川口 俊哉さんらのグループは、「マイクロプラスチックは、野外を漂う期間が長ければ長いほど魚に摂食されやすくなる」という仮説を立てて、検証を行いました。そして、マイクロプラスチックを池の水で約4ヶ月間培養した実験から、培養期間の増加に伴いマイクロプラスチック表面にバイオフィルムと呼ばれる微生物の集合体が形成されていくことが分かりました。また、キンギョを用いた室内飼育実験から、キンギョは摂餌時にバイオフィルムが付着したマイクロプラスチックをより好んで誤食する傾向があることが明らかになり、仮説の一部が支持されました(図1)。

 

【概 要】
  マイクロプラスチックは、長さが5mm よりも小さなプラスチック片のことです。これは、発泡スチロール箱などの大型のプラスチック製品が紫外線などの影響により劣化することで発生し、今や世界中の海や川に漂っています。近年、多くの魚類の体内、特に消化管の中でマイクロプラスチックが見つかっています。本研究の結果により、魚は野外に捨てられ浮遊する期間が長いマイクロプラスチックをエサと間違い易くなることを示しており、プラスチックゴミの自然界への流出を早急に食い止める必要があります。
  本研究成果は、2022 年10 月18 日に国際学術雑誌 Environmental Pollution (IF=9.988)にオンライン掲載されました。なお、研究の一部は、科学研究費補助金 若手研究 課題番号JP18K14790、および基盤研究C 課題番号JP21K06337 の助成を受けて実施されました。

1.【背景】
マイクロプラスチック汚染は、湖、川、海、堆積物、土壌、大気など世界のあらゆる環境下で進行しています。1950 年代以降、プラスチックの生産量は飛躍的に増加し、2015 年時点で、これまでに破棄された全プラスチックの80%近くにあたる約50 億トンのプラスチックが埋め立てや環境中に蓄積されていると推定されています。これらのプラスチックの一部は、分解されるのではなく、機械的ストレス、光分解、酸化によって小さな粒子に分解され、直径5mm 未満のプラスチックは、一般的にマイクロプラスチックと定義されています。現在、マイクロプラスチックの摂食による生物への悪影響が世界的に懸念されています。今までに、無脊椎動物、鳥類、ウミガメ、魚類など水界の生物がマイクロプラスチックを摂食していることが報告されてきました。特に魚類では、約500 種でマイクロプラスチックの摂食が確認されています。水生生物はなぜプラスチックを摂食するのでしょうか? マイクロプラスチックが魚類に与える影響を判断するためには、マイクロプラスチック摂食の背後にあるメカニズムを明らかにする必要がありました。

2.【研究手法?成果】
私たちは、「マイクロプラスチックが水環境にさらされると、その表面にバイオフィルムが形成され、魚が摂食する確率が高くなる」という仮説を立てました。そこで、キンギョを用いて、マイクロプラスチックの培養と比較的シンプルな摂餌実験(図2)により、以下の3 つの作業仮説を検証しました。

 

(i) マイクロプラスチックの表面に形成されるバイオフィルムの量は、培養期間が長くなれば増加するのか?
(ii) 魚はマイクロプラスチックを誤食しやすくなるのか?
(iii) 魚はマイクロプラスチックを誤飲しやすくなるのか?

ここで、誤食とは魚がマイクロプラスチックを口の中に入れること、誤飲とはそのマイクロプラスチックを消化管内に移動させる(飲み込む)こと、そして摂食とは誤食と誤飲どちらも起こることと定義しました。

 

本研究は、水環境へのマイクロプラスチックの暴露時間の変化が魚類の摂食行動に直接的な影響を与えることを示す初めての証拠です。培養期間が長くなると、
(i)マイクロプラスチック表面のバイオフィルム量が増加するという作業仮説が支持され、(ii)魚がマイクロプラスチックを口に入れる可能性が高くなることも支持されました(図3)。

また、マイクロプラスチックの培養期間が長くなると口の中にマイクロプラスチックを入れている時間(モグモグ時間)が長くなることも分かりました。しかし、魚の消化管に蓄積するという作業仮説(iii)は、魚がマイクロプラスチックを飲み込まなかったため、支持されませんでした。今後、マイクロプラスチックの粒子径や密度、魚の摂餌戦略など他の要因でマイクロプラスチックの摂食が説明できるかもしれません。

3.【研究者のコメント】
私たちは、長崎大学水産学部の附属練習船、長崎丸や鶴洋丸といった大型船を活用してマイクロプラスチック問題に取り組んできました[例えば参考文献1、2]。今回は、一旦、陸にあがり室内実験によりマイクロプラスチックの誤食メカニズムを明らかにすることにしました。この研究により、キンギョは水環境中に浮遊する期間がより長いマイクロプラスチックを好み、口の中でモグモグする時間も長いことが明らかになりました。プラスチック類の多くは水よりも軽いです。野外に捨てられたプラスチックは、海や川をプカプカ浮かんでいる間に、私たちが知らない間に魚を誘惑し続けているのかも知れません。現在、私たちは環境省の環境研究総合推進費の支援を受け、マイクロプラスチック誤食の生物影響などの解明を目指して更に研究を進めています。

<論文タイトルと著者>
タイトル:Microplastic pollution in aquatic environments may facilitate misfeeding by fish
(水環境のマイクロプラスチック汚染は魚による誤食を促進する可能性がある)
著 者:八木光晴、小野友梨夏、川口俊哉
掲 載 誌:Environmental Pollution
DOI:https://doi.org/10.1016/j.envpol.2022.120457

<参考文献>
[1]Mitsuharu Yagi, Tsunefumi Kobayashi, Yutaka Maruyama, Sota Hoshina, Satoshi Masumi, Itaru Aizawa, Jun Uchida, Tsukasa Kinoshita, Nobuhiro Yamawaki, Takashi Aoshima, Yasuhiro Morii, Kenichi Shimizu, 2022.
Microplastic pollution of commercial fishes from coastal and offshore waters in southwestern Japan, Marine Pollution Bulletin, 113304.
https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2021.113304

[2]Tsunefumi Kobayashi, Mitsuharu Yagi, Toshiya Kawaguchi, Toshiro Hata, Kenichi Shimizu,2021.
Spatiotemporal variations of surface water microplastics near Kyushu, Japan: A quali-quantitative analysis, Marine Pollution Bulletin, 112563.
https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2021.112563