中国竞彩网_新浪体育nba-直播*官网

图片

HOME > Research > 詳細

Research

ここから本文です。

遺伝子の光反応を実現する新しい光架橋性化合物の開発に成功 ~あらゆる分子への光反応性の付与を可能とする万能分子に期待~

 核酸医薬(注1)は、遺伝子(DNA)そのものを標的にできる新たな創薬モダリティとして注目されています。近年では、核酸医薬に様々な機能を搭載した次世代型核酸医薬が次々と開発されています。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科薬学系)の山吉麻子教授、三瓶悠助教、中尾樹希大学院生らは、あらゆる核酸医薬に対し「光反応性」の付与を実現する新たな技術を開発しました。

■ポイント
? 遺伝子の本体である「二重鎖DNA」に対して直接作用する核酸医薬は非常に注目されております。とりわけ、標的DNAに対して架橋し、強固に結合することが可能な核酸医薬(架橋性核酸医薬)は、次世代型核酸医薬として期待されています。
? 光照射により二重鎖DNAと架橋する光架橋性分子「Psoralen(ソラレン:注2)」を、あらゆる核酸医薬に搭載することが可能な、新しい光架橋性化合物の開発に成功しました。
? 既存の光機能性化合物を用いて合成した人工核酸(図1:C8-Psoralen DNA)と比較し、本研究で開発した光架橋性化合物を用いて合成した人工核酸(図1:C5-Psoralen DNA)は、二重鎖DNAに対する架橋効率が大きく向上することを見出しました。
? 今後、光照射をトリガーとした新たなゲノム編集技術などへの展開が期待されます。

図1 光架橋性核酸医薬の実現のための分子設計
図1 光架橋性核酸医薬の実現のための分子設計
本研究で開発した光架橋性化合物を用いて合成した光架橋性核酸(下:C5-Psoralen DNA)は、
既製品を用いて合成した光架橋性核酸(上:C8-Psoralen DNA)と比較し、
標的遺伝子への光架橋効率が大きく向上した。


■概要
 核酸医薬は、従来の医薬品では標的にできなかった遺伝子そのものを標的に出来るという点で、新たな創薬モダリティとして注目を集めています。これまではmRNAを標的とした核酸医薬品が上市されてきましたが、近年、遺伝子の本体であるDNAを直接標的とした核酸医薬が注目を集めています。DNAは二重らせん構造を形成しているため、これに対し三重鎖形成して結合する核酸医薬が必要になりますが、二重鎖DNAに対して強固に結合する人工核酸の開発が特に求められており、様々な人工核酸が開発されてきました。
 これまでに山吉教授らは、光照射によって標的遺伝子と架橋する光架橋性核酸医薬を開発してきました。光架橋性分子として、皮膚病の光線治療にも用いられている天然化合物である「Psoralen(ソラレン)」に着目し、これを導入した人工核酸を開発し、核酸医薬としての有効性を検証してきました。光架橋性核酸医薬は標的遺伝子と共有結合を介して結合するため、不可逆的で強固な結合形態を実現します。一方でこの核酸医薬の合成には、特殊な試薬や手法(固相ホスホロアミダイト法)が必要であり、DNA自動合成機を所有していない一般の実験室で合成することは極めて困難でした。
 そこで山吉教授らは、様々な核酸医薬に簡便に光架橋性を付与することが可能な「新たな光架橋性試薬(Psoralen-NHS)」を開発しました。Psoralen-NHSは、アミノ基を有する分子と混ぜるだけで、原理的にどの分子にもPsoralenを導入することが可能です。山吉教授らはこのPsoralen-NHSの化学構造をさらに精査し、核酸へ導入するリンカーの導入部位によって、二重鎖DNAに対する光架橋性を大きく向上させることに成功しました(図1)。
 本研究成果は、光を用いた次世代型の核酸医薬として、また、ゲノムDNAの情報を書き換える「ゲノム編集技術」への展開が期待されます。光を外部刺激として用いるため、遺伝子発現の時空間的な制御も可能となるため、新たな遺伝子解析ツールとしての活用も期待されます。さらに本研究成果によって、核酸医薬だけでなく、アミノ基を有する様々な分子に光架橋性を付与することも実現できます。

 本研究は、東北大学の和田健彦教授、大阪大学の堂野主税准教授らと共同で行なったものです。
 
 本研究成果は、2023年3月10日(英国時間または米国東部時間)に国際学術誌「ChemBioChem」のオンライン版で公開されました。また、同誌の表紙にも選出されました。さらに山吉教授らは、同誌に「化学と生物学の次世代を担う科学者」として認定され、本研究成果が特別号「ChemBioTalents 2022/23」において紹介されることも決定いたしました。
オンライン版はこちら http://dx.doi.org/10.1002/cbic.202200789
 本研究は、文部科学省(MEXT)科学研究費補助金?学術変革領域(A)研究課題名「マテリアル?シンバイオシスのための生命物理化学」、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業?基盤研究A「レトロウイルス感染症の根治を目指した新規光ゲノム編集技術の開発」、若手研究「新規ソラレン結合型三重鎖形成核酸の開発と光ゲノム編集技術への応用」、物質?デバイス共同研究拠点?展開共同研究「DNAのエピジェネティック修飾を標的とした新規遺伝子制御分子の開発」、物質?デバイス共同研究拠点?機動的プロジェクト「プロウイルス遺伝子を標的とした新規光駆動性核酸の開発」からの支援を受けて行われました。

<論文タイトル>
“Unique Crosslinking Properties of Psoralen-conjugated Oligonucleotides developed by Novel Psoralen N-Hydroxysuccinimide Esters”
(新規Psoralen-NHSエステルを用いたPsoralen導入型オリゴヌクレオチドのユニークな架橋特性について)
URL: http://dx.doi.org/10.1002/cbic.202200789
doi:10.1002/cbic.202200789

<用語解説>
注1)核酸医薬
DNAやRNAなどの遺伝情報を司る物質である「核酸」を医薬品として利用するものである。従来の医薬品では標的にできなかった遺伝子そのものを直接標的にできるという点で、新たな創薬モダリティとして注目を集めている。
注2)Psoralen(ソラレン)
紫外線照射(365nm)により、核酸のピリミジン塩基選択的に架橋する光架橋性分子。イチジクの葉やセロリなどの植物に存在する分子であり、古くから乾癬、皮膚炎、尋常性白斑などの光線治療に用いられてきた。