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興奮性アミノ酸がアフリカの奇病Nodding Syndrome (うなづき症候群(※1))の原因物質である可能性について報告しました

   株式会社鎌倉テクノサイエンスの宮内 泰(長崎大学大学院熱帯医学?グローバルヘルス研究科博士前期課程修了)、同大学多文化社会学部の佐藤 靖明 准教授、同大学大学院熱帯医学?グローバルヘルス研究科の北 潔 教授らの共同研究グループは、動物モデルの結果を通して、興奮性アミノ酸がNSの原因物質である可能性について検討しました。興奮性アミノ酸は、脳内の神経伝達物質であり、また自然界では、一般に知られているグルタミン酸の他、毒キノコのイボテン酸、海藻(海人草)に含まれるカイニン酸、海貝におけるドイモイ酸、一部の植物に含まれるキスカル酸など、人が食する可能性のある物の中にも含まれています。そして今回、興奮性アミノ酸のひとつであるカイニン酸投与によるラットてんかんモデルにおいて、その症状および病理組織像からNSとの類似性を初めて報告しました。
  この研究成果は、学術誌「Tropical Medicine and Health」(2023年5月19日)にWeb掲載されました。

■概 要 
  Nodding Syndrome(うなづき症候群、以下NS)は、1990年代前半からスーダン(現在の南スーダン)、それに続き2003年頃からウガンダ北部の子どもに多発した原因不明の病気です。てんかん様症状を主訴とし、脱力してうなづく(nodding)ような発作を特徴とします。こうしたアフリカでの流行に対して、WHOや米国CDCなどの機関を含め多数の研究者が調査を行ってきましたが、未だに病気のメカニズムの解明には至っていません。現在、治療法も確立しておらず、NSを発症した子どもへのケア、またその家族の負担などが大きな問題となっています。NSの原因が分かれば、予防法、およびNSを発症した子供達の神経症状の進行の抑制をはじめとする治療法を考える上で貴重な情報となります。

■背 景 
 NSは、流行地域の分布と子どもの病歴より、寄生虫感染症であるオンコセルカ症(※2)との関連性が指摘されています。しかし、なぜ同じオンコセルカ感染症が見られる南米でNSが認められないのか、また、なぜ3歳以降の子供のみにしか発症が認められないのか、といった点が不明であり、病因についてオンコセルカのみでは説明できません。一方、興奮性アミノ酸は、動物に神経細胞死を誘発する物質であり、また興奮性アミノ酸の1つであるカイニン酸は動物にてんかん様症状を示す物質として知られています。しかし、現在までNSと興奮性アミノ酸の関連性については言及されていませんでした。

■研究成果の内容 
  本研究では、NS患者とカイニン酸投与ラットに観察される臨床症状(nodding症状)、脳における病変部位(大脳皮質、海馬、扁桃体)およびその病理組織学的変化(神経細胞死とグリオーシス)において類似していることを明らかにしました。また、最近NS患者の脳の神経細胞においてアルツハイマー病で観察されるリン酸化タウタンパク質の沈着が認められることが報告されていますが、今回本モデルにおいても、カイニン酸投与によって誘発された壊死部周辺の神経細胞においてリン酸化タウタンパク質の蓄積が観察されました。
 これまでNSと興奮性アミノ酸の関連性が議論されなかった理由として、NSの流行地域の人々がこのアミノ酸を何から摂取したのかが不明だったことが考えられます。研究グループは、カビによる黒穂病に感染したトウモロコシにカイニン酸受容体作動性物質であるトリコロミック酸が含まれることに注目しており、今後、ウガンダ北部の黒穂病のトウモロコシなどの食品や生薬などにおける興奮性アミノ酸について調べる予定です。また、本研究において、トリコロミック酸を含めカイニン酸受容体作動性物質が神経細胞に到達するためには血液脳関門(※3)の透過性亢進が必要ですが、その要因として寄生虫感染および内戦などの精神的苦痛の可能性にも言及しました。

■今後の展開 
   今回の結果はサブサハラアフリカ(※4)の人々にとって日常の重要な主食であるトウモロコシなどについての注意喚起となります。現在、スーダンの内戦によって多数の難民が発生し、周辺国の難民キャンプに移動していますが、こうした難民キャンプでの援助食糧についても注目していきたいと考えています。

※1 うなづき症候群 日本では、2013年に「うなづき症候群対策ネットワーク」が設立され、現在まで学際的な共同研究が行われている。この表記にならい、ここでは「うなずき」ではなく「うなづき」とする。
※2 オンコセルカ症 回旋糸状虫の感染によって引き起こされ、河川盲目症とも呼ばれる。アフリカおよびラテンアメリカで見られ、また本症の治療薬は大村智博士が発見したイベルメクチンである。
※3 血液脳関門(BBB; Blood Brain Barrier) 脳において、血管から脳組織への物質移行に関わっている機構で、特に有害物質が脳に血液から入ることを防ぐ機能をもっている。
※4 サブサハラアフリカ サハラ砂漠より南のアフリカ地域を指し、NSがみられる南スーダン、ウガンダも入る。

■論文情報 
【掲載誌】Tropical Medicine and Health
【論文タイトル】Excitatory amino acids, possible causative agents of nodding syndrome in eastern Africa
【著 者】Yasushi Miyauchi 1,2,*, Ayaka Shiraishi 2, Konami Abe 2, Yasuaki Sato 3, Kiyoshi Kita1 4
【所 属】
1. School of Tropical Medicine and Global Health, Nagasaki University, Nagasaki, 852-8523, Japan
2. Department of Bio Research, Kamakura Techno-Science, Inc., Kanagawa, 248-0036, Japan
3. School of Global Humanities and Social Sciences, Nagasaki University, Nagasaki, 852-8521, Japan
4 .Department of Host-Defense Biochemistry, Institute of Tropical Medicine, Nagasaki University; Nagasaki, 852-8523, Japan *Correspondence

【URL】https://tropmedhealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41182-023-00520-0
【Published】 19 May 2023,
【DOI】 https://doi.org/10.1186/s41182-023-00520-0