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温暖化に伴い分布拡大をしているコガタノゲンゴロウは他種のゲンゴロウよりも飛翔しやすいため広範囲に移動分散していることを解明

 国立大学法人長崎大学教育学部の大庭伸也准教授と広島修道大学人間環境学部の鈴木智也助教、信州大学学術研究院理学系の東城幸治教授らの研究グループは、2010年頃から西日本各地で増加?新たな分布記録が確認されるようになったコガタノゲンゴロウが、他種のゲンゴロウよりも飛翔しやすく、国内全域の集団間に遺伝的分化が殆どないことを初めて明らかにしました(図1)。この結果は、コガタノゲンゴロウが近年急速に分布を拡大させていることを示唆します。

■研究のポイント 
●観察実験でコガタノゲンゴロウは、他種のゲンゴロウよりも飛翔しやすいことが明らかとなりました。
●3種のゲンゴロウについて、分子系統解析を行ったところ、それぞれの飛翔頻度の高低と地域的な遺伝的分化の大小が相関していることが判明しました。
●これらの結果から、コガタノゲンゴロウは他種のゲンゴロウよりも活発に飛翔することで、分布域を拡大させていることが示唆されます。

図1.本研究の概要


■研究概要解説 
 ゲンゴロウ類は池や沼、水田に住み、かつては身近に見られた甲虫ですが、水辺環境の悪化に伴い年々個体数の減少が報告されています。コガタノゲンゴロウは南西諸島、九州や四国の南部に残存していたゲンゴロウの一種で、絶滅の危機が最も高いとされる環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されていました。ところが、2010年頃から西日本を中心に一度は絶滅と判断されていた地域での再発見に加え、これまで分布が確認されていなかった地域での発見例が増えてきており、絶滅の危機が小さくなったとして、2012年の環境省レッドリストで絶滅危惧IA類から絶滅危惧Ⅱ類に下方修正されました。
 これまでの大庭准教授の研究グループの調査から、温暖化の影響が本種の分布拡大にプラスの影響を与えていること(Ohba et al. 2020, 2023)、加えて、近縁種のナミゲンゴロウとクロゲンゴロウと比べて、水中での競争能力が高いこと(Ohba et al. 2022)を報告していました。
 今回の研究では、コガタノゲンゴロウと同属のナミゲンゴロウとクロゲンゴロウと飛翔頻度の観察や、ミトコンドリアDNA の遺伝的構造を明らかにするために分子系統解析を行いました。その結果、①コガタノゲンゴロウは3種の中で最も飛翔率が高く、特に春と秋に飛び立ちやすいこと(図2左)、②体に対して相対的に大きな前翅をもつこと(図2右)、そして、③地域的な遺伝的分化の度合いは、ナミゲンゴロウで最も大きな遺伝的分化が検出された(糸魚川静岡構造線をおおよその境界として、大きく分化した2つの遺伝的グループに分かれる)のに対して、コガタノゲンゴロウは地域的な遺伝的分化がほとんどないこと、クロゲンゴロウではそれらの中間的な遺伝的構造を持つこと(図3)がわかりました。

図2.月1回、強制的に水のないカップに上陸させて1時間観察した時の飛翔頻度(左)と体に対する前翅※の重さ(右)の種間比較。
※飼育下で死亡した個体より測定したため、状態の悪かった後翅は測定していない。

図3.ゲンゴロウ属3種の遺伝的構造


 円の大きさは個体数、円の色はハプロタイプ*が検出された地域を示し、小さな黒い円は仮想ハプロタイプを示す。ナミゲンゴロウは、糸魚川静岡構造線を境界として遺伝的に大きく分化する傾向がある(飛翔頻度が高くないため、地域ごとの遺伝的な分化が大きいことが示唆される)。一方で、コガタノゲンゴロウは琉球列島なども含めて、地域間の遺伝的分化は検出されていない(飛翔頻度が高く、飛翔によって生息域を拡げているため、どの地域をみても遺伝的に大きく分化していないと示唆される)。クロゲンゴロウは、ナミゲンゴロウとコガタノゲンゴロウの中間的な遺伝的構造になっており、3種とも飛翔頻度と相関した遺伝的構造となっている。
 これらの結果は、コガタノゲンゴロウが他の2種よりも活発に飛翔することで、近年、国内でその分布域を北東へと拡大させていることを示唆しています。さらに、近年の地球温暖化による幼虫生存率(Ohba et al. 2020)、暖冬による越冬時の生存率向上(Ohba et al. 2023)、競争能力の高さ(Ohba et al. 2022)がコガタノゲンゴロウの近年の発見記録の増加の一因となっていることが示唆されます。

*ハプロタイプ…ミトコンドリアDNAの塩基配列のパターンのことです。

 本研究の成果は英国リンネ学会の学術誌『Biological Journal of the Linnean Society』に2024年2月24日に公開されました。

■論文情報 
Ohba S1, Suzuki T2, Fukui M1, Hirai S1, Nakashima K1, Bae YJ3, Tojo K4 (2024) Flight characteristics and phylogeography in three large-bodied diving beetle species: Evidence that the species with expanded distribution is an active flier. Biological Journal of the Linnean Society, Early View

著者所属と名前
1:長崎大学教育学部
大庭伸也、福井瑞生(18年度卒)、平井祥子(15年度卒)、中島かりん(14年度卒)
2:広島修道大学人間環境学部
鈴木智也
3:高麗大学校(韓国)
Yeon Jae Bae
4:信州大学学術研究院理学系
東城幸治

【論文(英文)ダウンロード】
https://doi.org/10.1093/biolinnean/blae017

<参考>

教育学部?大庭伸也准教授がゲンゴロウ類の生態に関して新知見:コガタノゲンゴロウは温暖化で増加か?



温暖化に伴い分布拡大をしているコガタノゲンゴロウが近縁種よりも高い競争能力を備えていることを初めて明らかにしました


?Ohba S, Ogushi S, Goto N, Watanabe R (2023) The overwintering ecology of Cybister tripunctatus lateralis: Do sub-zero temperatures during winter suppress range expansion? Japanese Journal of Environmental Entomology and Zoology 34(9): 101-107.
?Ohba S, Terazono Y, Takada S (2022) Interspecific competition amongst three species of large bodied diving beetles: is the species with expanded distribution an active swimmer and a better forager? Hydrobiologia 849: 1149–1160.
?Ohba S, Fukui M, Terazono Y, Takada S (2020) Effects of temperature on life histories of three endangered Japanese diving beetle species. Entomologia Experimentalis et Applicata 168: 808-816.